「リードナーチャリング」とは、アメリカ発祥であるマーケティング手法の一種です。主に企業間取引(BtoB)で用いられ、見込み顧客の購買意欲を高めて販売につなげていきます。
営業活動において顧客の獲得に注力する日本においては、なじみの薄いマーケティングといえるでしょう。
しかし、リードナーチャリングについて理解を深めると、販売につなげる効果が高いマーケティングであることがわかります。この記事では、リードナーチャリングが注目される理由やプロセス、コツのほか、活用したいツールについて説明します。
リードナーチャリングとは、見込み顧客を育成して商品やサービスの販売につなげるマーケティング手法です。
英単語の「リード(Lead)」は「見込み顧客」、「ナーチャリング(Nurturing)」の名詞形にあたる「Nurture」は「育成」という意味であることからも、リードナーチャリングは、見込み顧客の育成に重点を置き、商品の購入意欲を高めることを目標としていることが読み取れます。
リードナーチャリングが今注目を集めている理由としては、下記があげられます。
・商品を認知してから購入するまでの期間が長い
・休眠顧客が増加している
それぞれについて、説明していきます。
現在では、商品を認知してから購入するまでの期間が長めとなっています。それには、インターネットを日常的に利用できる時代になったことが関係しています。
例えば、気になる商品を見かけたとき、必ずしも即断即決で購入するとは限りません。現在ではインターネットを手軽に利用できるため、気になる商品を見かけたときは下記のような考えを持つことが多いでしょう。
・この商品はどんな商品なんだろうか、ネットでじっくり調べてみよう
・この商品のほかにもっと良さそうな商品はないだろうか
・購入するかどうかは、この商品の口コミを見てから決めることにしよう
以上のような考え方が日常的なものとなっているため、営業マンが営業したときに商品を説明したとしても、相手からは「購入するかどうか検討させてください」という返答を受けることがあります。
営業した時点で商品を購入してもらえれば問題はありませんが、商品を購入しないことも十分に考えられます。その場合、後述する「休眠顧客」にもなりかねません。
このような商品を認知してから購入するまでの期間が長い場合は、リードナーチャリングが有効といえます。
リードナーチャリングが重要視される理由として、「休眠顧客の増加」があげられます。
休眠顧客とは、かつては商品を購入していた顧客であったものの、現時点ではほとんど商品を購入していない顧客を指します。
休眠顧客が生じてしまう理由は、新規の顧客の開拓に力を入れていたり、現時点で多くの商品を購入している顧客を重視したりして、かつて商品を購入した顧客にまで手が回らないためです。
休眠顧客は以前自社商品を購入していた顧客であるため、少しのアプローチで販売につながる顧客の可能性があります。そのため、見方によっては優良な顧客ととらえることができるでしょう。
休眠顧客に対して定期的にアプローチするには、リードナーチャリングが効果的です。
リードナーチャリングのプロセスについて大まかな流れをまとめると、下記の通りになります。
・営業担当者や各部署が持っている顧客の情報を1つにまとめる
・顧客のニーズを理解する
・自社商品はどの客層が求めているかを特定する
・顧客が商品に興味を持つ要因、購入する要因を把握する
・顧客が商品を購入するにあたっての行動パターンをまとめて、カスタマージャーニーマップを作成する
・顧客が商品を認知、購入するための機会を設ける(SNSでの告知、メールで連絡、展示会・商談会開催など)
・リードナーチャリングを行うにあたり、営業部門との連携を強化する
・商品を購入する見込みが大きい顧客は営業担当者に引き継ぐ
以上のプロセスについて、流れを追って順に説明します。
リードナーチャリングを行うための前準備は、顧客の情報を1つにまとめることです。
営業担当者や営業・マーケティングなどの部署が持っている顧客情報をまとめておくと、顧客にアプローチしやすくなります。
顧客に関する情報をまとめたあとは、顧客や商品に対する理解を深めます。具体的には、顧客が求めているニーズは何か、自社商品はどの客層が求めているのか、顧客はどんな要因で自社商品に興味を持ち、購入するのかということです。
次に、顧客が商品を購入するときの行動パターンがある程度まとまったら、「カスタマージャーニーマップ」を作成します。
カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客の段階から顧客になるまでの行動や感情・思考をわかりやすい形で1枚の図にまとめたものです。
カスタマージャーニーマップを作成すると、顧客の行動内容に応じて、商品の販売につなげるための手段を適切に実施できます。
顧客が商品を認知するための機会として、自社で運営しているSNSや顧客へのメールで商品を告知します。
また、商品を購入する機会として展示会や商談会を設けたり、自社サイトから直接商品を購入できるページを作成したりします。
リードナーチャリングを行ううえでは、マーケティングの部署と営業の部署が連携することがポイントとなります。これにより、商品の購入見込みが大きい顧客は営業担当者に引き継ぐことができ、商品の販売につなげられます。
リードナーチャリングを効率的に行うためには、マーケティングに関する様々な業務をいかに自動化するかがポイントです。
マーケティングに関する業務を人手で行うと、作業が予定通りに進まない場合があるほか、作業の漏れが発生してしまうこともあり、効率性の面から見ると難があるといえます。
そこで活用したいツールが、MA(マーケティングオートメーション)ツールです。MAツールについては次の項目で詳しく説明します。
リードナーチャリングを効率的に行うためには、先述した通りMAツールの利用が必須となります。
この項目ではMAツールのほか、リードナーチャリングの効果を高める効果が期待できるCRMツールについて説明します。
MAツールとは、各種マーケティング施策を自動的に行うツールのことです。MAとは「Marketing Automation」の頭文字を取ったもので、文字通りマーケティングの自動化を意味します。
MAツールを活用すると、下記の業務が自動化されます。
・顧客情報の一元管理
・顧客の優先度を数値化して表示
・販売促進キャンペーンを自動的に実施
・顧客向けにメール配信
・オンライン上における顧客の行動を可視化
・CRMツールとの連携
それぞれの項目について簡単に説明します。
MAツールを利用すると、顧客情報を一元的に管理することが可能です。
最近商品を販売した顧客や、最近は商品の販売につながっていない「休眠顧客」に加え、メールで問い合わせを受けたり、Webサイトでの資料請求を行ったりした顧客など、オンライン上でつながった顧客の管理も行えます。
MAツールで一元管理している顧客情報は、見込みがある顧客かどうかを数値化して示すことができます。
例えば、最も購入する見込みの大きい顧客を100、購入する見込みが限りなくゼロに近い場合は0としましょう。
この数値を利用することにより、購入する見込みが大きい顧客を優先的にアプローチできます。それにより、商品が売れる可能性が高まり、売上アップにつなげやすくなるのです。
MAツールを活用すると、販売促進キャンペーンを自動的に実施できます。
例えば、期間を限定した商品の割引販売や、問い合わせを行った顧客に対して試供品を提供するキャンペーンなどがあげられます。
先述した「顧客の見込み度の数値化」の機能を活用すると、より効果的なマーケティングが可能となります。
MAツールでまとめた顧客情報を利用して、顧客向けに商品の案内などが記載されたメールの配信も行えます。
メールを配信する場合も、顧客の見込み度を数値化した機能を活用し、比較的見込みが高いと思われる顧客に向けて配信すると、商品の販売につなげやすくなります。
MAツールを利用すると、オンライン上における顧客の行動を可視化が可能です。具体的な行動の内容としては下記があげられます。
・顧客がどのような流れで自社サイトにたどり着いたのか
・顧客が自社サイトに滞在した時間はどのくらいか
・顧客はどのページから離脱したか
・商品を購入した顧客は、サイト内のどのページを閲覧したか
オンライン上における顧客の行動を可視化することにより、どのページを充実させれば良いか、改善が必要なページはどのページか、どんなSEO対策を講じれば良いか、という課題が見えてきます。
課題がわかれば自社サイトを改善できるため、販売につなげられます。このことから、オンライン上における顧客の行動の可視化は有効といえるでしょう。
MAツールは、CRMツールと連携させることによって顧客情報を共有しやすくなり、効率的なマーケティングが可能となります。
続いて、CRMツールについて簡潔に説明すると、顧客を管理するツールのことです。CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字を取ったもので「顧客関係管理」と表現されます。
リードナーチャリングを行うにあたってCRMツールを活用した方が良い理由は、顧客に関するデータが充実しているためです。
例えば、ある顧客がどんな商品をいつ購入したか、商品を購入する前にどんな問い合わせを行っていたか、どのキャンペーンに応募したかなど、顧客に関するあらゆるデータを参照することができます。
それにより、顧客のニーズを読み取ることが容易となり、適切なタイミングで顧客に商品を紹介するなどのアプローチを行えるのです。
さらに、CRMツールには営業支援システム(SFA)の機能を有しているものもあります。
この機能を活用すると、商品の購入を検討している状態にとどまっている顧客に対してもアプローチをかけられるため、営業の効果を高めることで販売につなげられます。
リードナーチャリングは、商品を認知してから購入するまでの期間が長い商品に適したマーケティング手法です。休眠顧客に対するアプローチにも効果が期待できます。
日本ではなじみの薄いマーケティング手法ではありますが、十分な効果が期待できるものです。理解を深めたうえで、MAツールをはじめとした各種ツールを活用しながら、効率的に取り入れてみましょう。
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